百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

MENU

本の紹介

アマチュア論。

アマチュア論。/勢古浩爾 ミシマ社 プロであることに憧れ、プロであろうとしていたのは、社会人になりたての頃のこと。「プロ論」という本をむさぼるように読み、社会人になったからには、その道のプロになるべきだ、でないと堂々とお金を稼ぐことができない…

A River

A River/Marc Martin 2年前まで住んでいた千葉では、自宅のすぐ近くに川があった。週末、ジョギングをしようと走り出すときは、コースにこの川沿いの道を選んだ。信号もなく、止まらずに自分のペースで走りやすい、という理由ももちろんあるけれど、一番は、…

あなたと、どこかへ。

あなたと、どこかへ。/吉田修一 角田光代 石田衣良 甘糟りり子 林望 谷村志穂 片岡義男 川上弘美 文藝春秋 熊谷の棚貸し本屋「太原堂」で店番をしていたある日、他の店主の棚を眺めていてふと目に入ったのが、この本だった。日産のセダン「TEANA」のスペシャ…

ぼくらの家。

ぼくらの家。9つの住宅、9つの物語/光嶋裕介 世界文化社 尊敬する建築家・光嶋裕介氏による、設計した9つの住宅にまつわるエッセイ。すべて彼によって書かれたものだが、語り手がすべて異なる。時にはクライアントの子供に。時には住宅の近くに住む野良猫に…

EDNE

EDNE/junaida 白泉社 junaidaの絵本に出会ったのは、「Michi」がきっかけだった。エッシャーのだまし絵を思わせる立体的な迷宮の絵に、心を奪われた。その後junaidaの幻想的な絵に惹かれ、いろいろな絵本を手に取った。 最新刊は、ミヒャエル・エンデの「鏡…

ランベルマイユコーヒー店

ランベルマイユコーヒー店/オクノ修・詩 nakaban・絵 ちいさいミシマ社 コーヒーの美味しいカフェの店頭で、毎月第四日曜日に、本を並べて売っている。昨年8月に自営業をスタートし、翌9月から毎月。もうすぐ1年になる。テラス席に本を並べて、本を手に取っ…

みんなの家。

みんなの家。建築家一年生の初仕事/光嶋裕介 アルテスパブリッシング 建築家の光嶋裕介さんに興味を持ったのは、下北沢の本屋B&Bでのトークイベントに参加したのが直接のきっかけ(※)。ユースケサンタマリアといとうせいこうがMCをつとめるトーク番組「オ…

イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由

イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由/猪田彰郎 アノニマ・スタジオ 行徳のカフェニルで月に一度の出張本屋を行った。暑く、風が強かったので特に記憶に残る一日になった。ただ自身本を読みながら、本を手に取ってくれるお客さんを待ちながら、コーヒー…

条文の読み方

条文の読み方 第2版/法制執務・法令用語研究会 有斐閣 平日昼間は法科大学院で、法曹になるべく学ぶ学生を支援する仕事をしている。OBOGの実務家の方々の協力を得ながら、司法試験に合格できる法的な知識を授ける、その講座運営をする立場だ。改めて法律の世…

カケル建築家

Next Architect2 カケル建築家/遠藤秀平 編 学芸出版社 建築家が建築家になるまでのこと、仕事で考えていることなどを語ったインタビュー集の2冊目(※)。自分は建築家にはなれないけれど、建築家の考えを浴びて真似しようとすることはできる。その「真似す…

四谷コーポラス

四谷コーポラス/志岐祐一 松本真澄 大月敏雄 編 鹿島出版社 読書自体を楽しむこととは別に、勉強しようと思って背伸びして手にした本はたいてい、読むのに時間がかかる。しかし、手放さずにずっと手元に置いておいて、読みこなせるようになりたいという想い…

住む。No.69

住む。2019年春号No.69 株式会社泰文館 小さい頃は、平屋住まいだった。リビングから廊下を歩いたその奥に弟と共同の寝室があって、全て横移動で暮らしていた。高校入試の少し前くらいのタイミングで自宅の増築をした。弟との共同寝室の壁をぶち抜いて渡り通…

台所にこの道具

台所にこの道具/宮本しばに アノニマ・スタジオ 料理についてのエッセイで、特に台所まわりの道具と絡めたものが好きだ。食べ物に関することだけのエッセイだと「おいしそうだなぁ」で終わるのだけれど、そこに道具にまつわるストーリーが加わると、とたんに…

逆のものさし思考

逆のものさし思考/清水克衛 エイチエス株式会社 自営で、ひとりで本屋を始めようと胸に誓った時、実をいうとそれほど具体的なビジョンはなかった。個人という小さい単位で、本を売ることに奔走している人は、決して少なくないだろう。そんななかで、自分だけ…

サンドイッチブルース

サンドイッチブルース/森田三和 ループ舎 自営業の本屋ブログでできる限り毎日、本の紹介と、日記のようなミニエッセイを書こう、と決めたのは、昨年の8月のこと。自然体で書かれたエッセイ、日記集を読んで、そのようなテキストを残したいという想いを経た…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹 文春文庫 それを読み始めたのは、単行本で発売されて間もないころだったと記憶している。「1Q84」をなんとか頑張って読んだから、次も挑戦しよう。そんな気持ちだった。しかし、割と序盤で、挫折した。淡…

8人はこうして建築家になった

Next Architect 8人はこうして建築家になった/遠藤秀平 編 学芸出版社 何度も文字に残してしまっていることなのだけれど、大学時代に建築設計者の道を断念した。鮮やかな挫折だった。これは一生勉強しても無理だ、と思った。だから建築業界である建設会社に…

コーポラティブハウスのつくり方

コーポラティブハウスのつくり方/NPO都市住宅とまちづくり研究会(編) 清文社 前職では、設計事務所に勤務し、コーポラティブハウスの企画に携わっていた。その前は、ゼネコンでマンションなど建築工事の受注営業をしていた。どちらにも共通しているのは、…

イギリスの飾らないのに豊かな暮らし365日

イギリスの飾らないのに豊かな暮らし365日/江國まゆ 自由国民社 フランスの次は、イギリス(※)。365日の日付に合わせて、365個の「自由気ままなイギリスの暮らし」を紹介するエッセイ。1ページ見開きで1日づつ。例えば今日の日付のページを開いてみるのも面…

街どろぼう

街どろぼう/junaida 福音館書店 junaidaの絵本に登場する人や妖怪には、なんだか底抜けの優しさ、あたたかさを感じる。若い夫婦が子供を抱き、肩を寄せ合っている「HOME」にしても、女の子の横顔だけの「の」にしてもそう。文字情報がほとんどないなかで、優…

ヘルシンキ 生活の練習

ヘルシンキ 生活の練習/朴沙羅 筑摩書房 ヘルシンキに憧れる。出不精で、海外旅行に行きたいなんて柄ではないけれど、もし海外に行く機会があるとして、国を自由に選べるのだとしたら、フィンランドはその筆頭候補に挙がる。建築、家具、サウナ。つまるとこ…

100年たったら

100年たったら/文・石井睦美 絵・あべ弘士 アリス館 知人からオーダーを受けた絵本。仕入れた後さっと読んだら、想像を超えるスケール感に驚いた。 広い草原の中に一頭のライオンがいる。食べる動物ももういない。そんななか、小さな鳥がやってきて、ライオ…

建築知識 No.782

建築知識 No.782 世界一美しい本屋の作り方 エクスナレッジ 本屋をつくりたい。そう考えている人のための本屋開業マニュアルのような一冊。しかし買ったのは、自営で本屋を始める前だった。本屋をやろうと決意するよりも前だったんじゃないかと思う。ただぼ…

活版印刷コレクション

活版印刷コレクション ビー・エヌ・エヌ新社 流鉄流山駅隣のコミュニティスペース「machimin」で3週間、本屋をやった。そこで、活版印刷を仕事にしている方がいらして、この本を手に取ってくださった。仕事に直結するきれいなデザインに惹かれたという。私…

この店、あの場所

この店、あの場所/松浦弥太郎 マガジンハウス 東京に住むようになって、人の多い混雑した場所にいる機会が増えた。決してそういう場所が好きなわけではないし、いまでも息苦しさを感じるのだけれど、でも良かったなぁと思うのは、食べ物がおいしい飲食店や、…

街場の芸術論

街場の芸術論/内田樹 青幻舎 内田樹の、ファンとしての立ち位置という考え方に共感した。ファンとは、「ファンを増やすことをその主務とする人」のことだという。その通りだと思った。自分と同じようにその対象、今どきの言葉で言うと「推し」を好きだと感じ…

まばゆい

まばゆい/僕のマリ lighthouse 社会人になりたての頃、施工現場の研修で約20キロやせた。自宅から現場まで近かったので毎日自転車で通勤した。現場ではロングスパンリフトを荷揚げをする職人に譲り、階段の昇り降りを繰り返した。14階建てのマンションだった…

北欧デザイン旅案内

北欧デザイン旅案内/萩原健太郎 学研マーケティング コペンハーゲンにある王立図書館は、その黒花崗岩の外壁から「ブラック・ダイアモンド」と呼ばれているそう。高くなるにつれて外に広がっていく斜め壁のその建物に、豪快さ、壮大さを感じる。まるで本を読…

ソトコト No.176

ソトコト No.176 February 2014 木楽舎 「なじみの本屋はここだ」「こういう本屋が近くにあって、そこが行きつけです」そうやって他人に本屋自慢をしたい。きっと私だけでなく、本屋さんで本を買って読むことが好きな人にとってもそうだろうと思う。そう思う…

塔の絵本

塔の絵本/絵・文 田中映縭子 ビーナイス 人間よりも長い時間、そこにあり続ける建物。自分が人間である以上想像しえない、何か大いなるものを、その塔に見出す。平和を祈り、昔も今も、そこにずっとあり続けることを願う。塔はその役割を担っている。誰の心…