四谷コーポラス/志岐祐一 松本真澄 大月敏雄 編 鹿島出版社
読書自体を楽しむこととは別に、勉強しようと思って背伸びして手にした本はたいてい、読むのに時間がかかる。しかし、手放さずにずっと手元に置いておいて、読みこなせるようになりたいという想いは、他の本より強いように思う。この本がまさにそうだ。設計事務所で仕事をしていた時に関わった「コーポラティブハウス」と語感は似ているけれど直接的な関連はない。日本初の民間分譲マンション「四谷コーポラス」ができるまでの話と、建て替えに至るまでの合意形成の話。また、四谷コーポラスに限らず、老朽化したマンションの建て替えに携わる旭化成の取り組みが紹介されている。
今後、建て替えを必要とするマンションがどんどんと増えてくるはずである。一方で、建て替え決議がすんなりと決まる管理組合の割合は、高齢化や空洞化、居住目的でなく投資目的での所有への変化など、いくつかの理由によって急激に少なくなっていくのではないかと思う。そのような情勢の中で建て替えを進めるにはどのようなノウハウが必要で、どのような担い手が必要なのか。それを考えるきっかけになる本である。