百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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住む。No.69

住む。2019年春号No.69 株式会社泰文館

 

小さい頃は、平屋住まいだった。リビングから廊下を歩いたその奥に弟と共同の寝室があって、全て横移動で暮らしていた。高校入試の少し前くらいのタイミングで自宅の増築をした。弟との共同寝室の壁をぶち抜いて渡り通路をつくり、鉄骨2階建ての増築棟をつくった。その増築棟の2階に個室をつくってもらい、そこで勉強などに専念した。だから何が何でも平屋住まいが良い、上下移動のある2階建てはチマチマしていて良くない、なんてことはとても言えない。階段をのぼることで家族が集うリビングと個室との間に心理的な境界線が生まれ、それが自宅を居心地よい空間にさせていたと今になって感じている。

 

そんな背景を踏まえたうえで、それでも平屋住まいに憧れる。水平方向に延びる広々とした空間。天井高さを抑える必要がなく、立体的でダイナミックな居場所ができる。そんな平屋住宅の魅力がたくさん詰まった写真集のような雑誌を眺めて、ふいに実家での暮らしに想いを馳せる。