逆のものさし思考/清水克衛 エイチエス株式会社
自営で、ひとりで本屋を始めようと胸に誓った時、実をいうとそれほど具体的なビジョンはなかった。個人という小さい単位で、本を売ることに奔走している人は、決して少なくないだろう。そんななかで、自分だけが提供しうる価値がすでにあるとはとても思えない。ではどうやって本を売ろうか。いや、売るだけじゃなくて何か別のアイデアを出さなければならないのではないか。そうやって模索し、何か思い浮かんだらとりあえず実行し、今日までトロトロと歩いている、そんな感じだ。
だから、書店主として本屋で本を売るだけでなく、各地で講演をし、読書の面白さ、本を読んで自分の力で考えて行動することの大切さを説いてまわっている人を知り、感銘を受けた。そうやって、「本を通して他者にどうしてほしいか。それを『売る』にこだわらずに考える」ことが必要だと思った。
篠崎の本屋「読書のすすめ」の店主による講演集。常識を疑い、目の前の出来事に惑わされず、確固たる軸をもって考えて、行動する。その力をつけるために必要な営みこそが、読書だ。