百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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月と散文

月と散文/又吉直樹 KADOKAWA

 

エッセイ集「東京百景」(※)を読んでなおのこと又吉直樹のことを好きになったのは、数年前。「秋の夜を走り抜けながら澄んだ空気の薫りが強くなったら、そこが仙川だ」当時仕事で仙川にはなじみがあったから、その言葉には妙に納得し、すごい言葉を書く人だなと感動した。東京の街それぞれに思い出があり、それを言葉に残す行為に憧れて、個人ブログで「百景」というカテゴリをつくって、自分にとってのなじみの街とその思い出を書いたりした。

 

その彼の、「東京百景」以来10年ぶりのエッセイ集が本書。表紙の松本大洋による絵が目をひく。14,000円の特装版も出ているよう。

 

会員制のオフィシャルコミュニティサイト「月と散文」で書いているエッセイから厳選したものに、書き下ろしを加えたもので、「満月」「二日月」の二部構成になっている。それぞれに、彼の生々しい日常、過去の振り返りが描かれている。「その状況でそう思うんだ。それをそのまま言葉にして伝えるって、すごいことだな」とびっくりする。

 

こんな言葉を姉に二度と言わせてはいけないと東京行きの新幹線のなかで思った。

 

姉の優しさと著者の強さに、しびれた。

 

(※)

sarusuberi-to-taiyo.hatenablog.jp