百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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聴竹居

聴竹居 藤井厚二の木造モダニズム建築 松隈章 写真・古川泰造 平凡社

 

どこか美術館に行った時だったか、何かの展示会に行った時だったか、売店で売っていたのを見て買ったのを覚えている。何の展示だったかは忘れてしまった。木造平屋の住宅のその佇まいに惚れて、こういうのを質実剛健というのだろうなぁ、とため息が漏れた。

 

「聴竹居(ちょうちくきょ)」は建築家・藤井厚二の自邸。「芝川邸」の設計者である武田五一京都帝国大学建築学科を創設した際、黎明期の竹中工務店に在籍していた藤井を大学に招聘したという。竹中工務店所属の設計者である著者が「芝川邸」の移築のための調査を進めていく過程で聴竹居の存在を知り、その詳細を紹介したのが本書だ。内観、外観とも様々な角度からの写真が多数収められていて、見ごたえがある。

 

今でいうリビングに面した必要最小限の小さな書斎。応接部屋を可能な限り減らしたメリハリある居室構成。夏場の快適性を重視して風の通り道をつくるためのクールチューブ・・・。現在の住まいづくり、設計においても頭に入れておくべきであろう考え方が詰まっている。