百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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「死」が教えてくれた幸せの本質

「死」が教えてくれた幸せの本質 二千万人を看取った医師から不安や後悔を抱えている人へのメッセージ/船戸崇史 ユサブル

 

8年くらい前だったか。祖母の死に立ち会った。身近な家族の死に直面したのは記憶の限りで初めてだったから、うろたえるだろうと思っていたのだけれど、意外と冷静な自分に、驚いた。目の前の祖母は当然ながら動かず、ただ静かに眠っているように見える。ただ、それとは明らかに違うということは一目で分かる。「死と向き合うってこういうことなんだ」初めての体験にびっくりし、それと同時に自分の中の世界も宇宙みたいにサーっと広がったように感じられた。

 

がん患者に対する医療に取り組む著者が、患者の死に多く立ち会いながら、体験したことを綴ったのが本書だ。イベント出店で出版社の代表に出会ったのがきっかけで、取り扱いをさせていただくことになった。普段、死について意識することなんてそうそうないだろう。だからこそ、誰もが通る「死」という道をじっと見つめ、そこで起きている生命の神秘に目を向けることが必要だ。それができるのが、本書を読むことの醍醐味と言える。