百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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複雑化の教育論

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複雑化の教育論/内田樹 東洋館出版社

 

成長とは何だろうと考えた時に、自分なりに定義した言葉がある。「昨日できなかったことが今日できるようになること」だ。できなかったことができるようになる、それが自身の成長を測る指標だと思った。私にとっての良い読書は、成長を実感できる読書である。なので、「読む前にはできなかったことが読んだ後にできるようになった」体験こそが、良い読書であると言い換えることができる。

 

内田樹の新刊は「複雑化」がテーマの教育論。コロナ禍以降の講演をまとめたものだ。本書の中で著者は、成熟とは複雑化することだと言っている。昨日までの自分に新しい考えが加わってより「複雑になる」。それによって人間に深み、厚みが出る。単に昨日できなかったことができるようになったか、という量的な指標だけで成長を捉えていた自分だったが、本当の成長とは、そのさらに先の領域なのかもしれない。