成長とは何だろうと考えた時に、自分なりに定義した言葉がある。「昨日できなかったことが今日できるようになること」だ。できなかったことができるようになる、それが自身の成長を測る指標だと思った。私にとっての良い読書は、成長を実感できる読書である。なので、「読む前にはできなかったことが読んだ後にできるようになった」体験こそが、良い読書であると言い換えることができる。
内田樹の新刊は「複雑化」がテーマの教育論。コロナ禍以降の講演をまとめたものだ。本書の中で著者は、成熟とは複雑化することだと言っている。昨日までの自分に新しい考えが加わってより「複雑になる」。それによって人間に深み、厚みが出る。単に昨日できなかったことができるようになったか、という量的な指標だけで成長を捉えていた自分だったが、本当の成長とは、そのさらに先の領域なのかもしれない。