百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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火星に住むつもりかい?

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火星に住むつもりかい?/伊坂幸太郎 光文社文庫

 

監視社会。たぶん10年前に同じ言葉を聞いてもピンと来なくて、どこか現実離れした、異次元の話のように感じたのではないだろうか。しかしいまは違う。困ったことに、それが現実のようにも感じられる。マスクをしないで出歩いている人に対してマスクをせよと注意するマスク警察。そもそも外出を控えよと注意する自粛警察。自分がその身になれば、マスクをしなかったり自粛ムードに非協力な人がいたりしたらムッとすることもあるのだから、お互いさまではあるのだけれど、どうも「迷惑」に対して不寛容で、迷惑をかけている主体を私的に罰しなければ気が済まない空気に満ちているように思う。

 

「平和警察」に取り締まられ処刑される社会で、正義の味方が現れるという話。どちらが正義なのか。現実として戦火が広がっているいま、この社会を異常と言い切れるか?なんだかいまの社会を先読みして描かれているように感じて仕方ない。