鬼は逃げる/ウチダゴウ 三輪舎
2年前、本屋「青と夜ノ空」で開かれた、架空のお店の名前を考えるワークショップに参加した。講師の詩人・ウチダゴウさんから直接、言葉の出し方を学ぶ。詩を扱う仕事人に触れたことがなかったので、新鮮で、贅沢な時間になった。彼のレクチャーを受けて、想いをそのまま言葉にのせて吐き出す素直さだけでなく、技術的な視点(自分が名乗って恥ずかしくないものにすべき、とか、大きすぎる目標にならないようにすべき、とか)も学んだ。
好きで良く読む雑誌「nice things.」の冒頭に、ひらがなだけで書かれた彼の詩が掲載されている。小学生になった気分で、その言葉が何を表しているのかを考えながら、ゆっくり読む。ひらがなだけの羅列に逆に読みづらさを感じるのは、言葉を漢字とセットで頭にいれているからか。でもそこには、漫画などをすいすい読むのとは違う、脳が軋みながら動くような快感がある。
本書はひらがなだけの詩とそうでない詩、そしてエッセイも加わった彼の詩集だ。ひらがなを目で追って漢字を想像するのも良いし、言葉の韻を楽しむのも良い。話し手の隠された想いを感じ取ろうと必死に脳を働かせるのも良い。