内田樹の著書「街場の~」シリーズで、初めて手にしたのがこれだと記憶している。大学の講義で話した内容を集めたコンピレーション本というテーマの「街場の~」シリーズをその後たくさん読むようになったのは、この本で彼の考えに触れたからではないだろうか。
著作権棚、特に読者と書籍購入者についての考察には、すごく考えさせられた。著述家が本を書くのは、自分の考えをより多くの人に知ってもらうことが目的であり、本を買ってもらうこと自体が目的ではない。買ってもらうことが目的となるのだとすると、「本を買わずにタダで読む人」は非難されなければならない。しかし、人間は誰もが子供の頃に図書館の本なり親に買ってもらった本なりを読む「無償の読者」からその読書人生を始める。そうして徐々に身銭を切って本を買うようになり、心が豊かになる。彼は著書の読者に用があるのであって、著書の購入者に用があるわけではない。
わたしも、ある著者にとって「書籍購入者」ではあっても「読者」ではなかったかもしれない。だから好きな本に対しては、もちろん「買い支える」という視点も大事だけれど、それよりも一読者であるという自負を、大事にしたいと思った。