手に取ったのは、表紙の美しさに見とれたから。だから邪だと言われたら否定できない。「炉辺」という言葉の意味も読み方も知らなかった。本のその佇まいから、じっくり読める本だという予感があった。
「ろへんのかぜおと」と読む本書は、八ヶ岳の山小屋を購入した著者が毎日新聞の連載に寄せたエッセイをまとめたもの。地方移住や二拠点居住といった地方回帰に憧れる人がイメージするであろう、山奥の自然に満ちた暮らしを実践してみせた、生の声を聞くことができる。私は何よりも著者の鳥に対する知識の豊富さに驚いた。それなら小鳥との共生も楽しいだろうとうらやましくなる。買った時の予感どおり、時間はかかっているけれど、ゆっくり読み続けたい本だ。