きみはだれかのどうでもいい人/伊藤朱里 小学館
税務署勤務の女性職員・中沢さんは、未納者からの罵詈雑言に耐えながら徴収業務を行う。まわりには淡々と仕事する上司、女子会を仕切るお局さん、頼りにならないパートさんなど。そのような環境で人間関係の軋轢を感じながらも、仕事に取り組んでいく。
登場人物それぞれが一人称になって展開する4章の物語。著者は実際に税務署で、そうでなければそれに代わる職場での勤務経験が実際にあるのだろうか、と思うくらい、そこで働く人物の描写が生々しい。自分の会社員時代の、まぁここまでの葛藤は正直自分にはなかったけれど、細かいことを思い出しては、どこも似たようなことはあるのかもしれないなと思う。そんなの気づくはずないじゃない。苗字のふりがなだってろくに見ない職場ですよ。たとえほんの小さな信号でも、SOSを求めるそれに気づけるようでありたいと思う。