雲ひとつない青空に向かって、工事中の建物を囲う足場が伸びている。頂上のタワークレーンが、いま建物が誕生する途中段階であることを示しているようだ。あのクレーンを見ると、社会人になりたてのころをぼんやりと思い出す。3か月間の現場研修。あの頃の必死だった自分をどこか象徴しているのが、タワークレーンのように思える。
14階建てマンションの階段の上り下りを繰り返し、20キロ体重を落とした。お前はなるべくロングスパンリフトを使わず、資材を搬出入する職人に譲れ。現場所長にそう明確に言われたのか、それとも自分で自分に課したのか、よく覚えていない。気づいたら15年が経っていた。