百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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「利他」とは何か

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「利他」とは何か/伊藤亜紗 編・中島岳志若松英輔國分功一郎・磯﨑憲一郎 集英社新書

店主所有古本につき折れなどあり 気に入ってくださった方には600円でお譲りします

 

他人のためにつくすこと。自分の利益を顧みずにふるまうこと。コロナ禍においては特に、「利他」を考えることに直面する機会が多い。そのキーワード「利他」について様々な立場から論考する。

 

特に気になったのは中島岳志の贈与、交換、感謝について。感謝されることを想定せず身体が勝手に動くくらい当たり前のように行った行動に対して、「ありがとう」と感謝されることに、違和感を感じたという話。わたしは他人から感謝されて違和感を感じた覚えがあまりないので、そのような捉え方があるということに驚いた。と同時に、感謝にも発すべき時とそうでない時があるのだと知った。感謝の言葉は、相手からの贈与の意を単なる交換に替えてしまう。

 

そして、利他の精神は自身のうちから発動するのではなく、自分の意識の外から突き動かされて発動するものであるということも、興味深かった。わらしべ長者の主人公のように、交換して利益があるかという計算をする前に身体が反応する。その力は「私たちのなかにあるものではない」。「利他を所有することはできない」。わたしたちは、自分が所有しえない外からの大いなる力が確かにあって、それに突き動かされて他人との関係を築いている、そのことを認識しなければならないのだ、きっと。