店主所有古本 きれいな状態です 気に入ってくださった方には800円(税込)でお譲りします。
建築学者の今和次郎による日本民家に関する考察。「民家」という言葉を世間一般に広めたのがこの本である、という藤森照信の解説のとおり、本書なしでは現在の我々は、農村や漁村の小さな家屋のことを別の言葉でひとくくりに表現していたのかもしれない。建築を学ぶものだけでなく、いまの暮らしをより豊かにするためのヒントを古くからの住居に見出そうとする現代の我々にとって、古典のような存在だ。
青森から九州まで、各所の民家を訪れ、その民家のつくりやそこでの暮らしを間取り図やスケッチとともに教えてくれる。そうか、わたしの実家の近くである秩父の山奥の家は、住居と麦を扱うところを屋根材で分け(藁ぶきと石置き)、穀物を保存する倉を家事から守るために主屋から離しているのか。東北の寒い地では、窓のない小さな寝どこ(ねま)で家族寄せ合って寝て過ごしたのか。まるで民家を巡って旅をしているような気さえする。