百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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まとまらない言葉を生きる

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まとまらない言葉を生きる/荒井裕樹 柏書房

 

誰もがなんとなく、もやもやと感じているであろうことを、きちんと言葉にして著された本がこれだと思った。

 

SNSや報道を見ていると、あ、危ないと気づいた時はもう遅くて、なんだか不穏当な言葉に触れてしまうことが多い。社会にはいまそういう意見があふれている。好奇心を満たすことが目的ならまだいい。でもそうでなくふとナイフで刺されることがあるから気をつけなければならない。特にインターネット上には「上から目線」の匿名の言葉があふれている。

 

『言葉には「降り積もる」という性質がある』と著者は言う。『ある人の「生きる気力」を削ぐ言葉が飛び交う社会は、誰にとっても「生きようとする意欲」が湧かない社会になる』とも。不穏当な言葉が「降り積もり」、言葉に触れる人間を侵し、「生きる力を削ぐ」のであれば、そうした言葉を、別の方向の言葉を降り積もらせることで覆い隠し、生きる力を取り戻すことが、いまの自分の役割なのではないかと思った。自分自身、不穏当な言葉に侵されつつあった心を、別の言葉に触れることで晴らすことができたと感じたのと同じように。