百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

MENU

いのちを呼びさますもの / いのちは のちの いのちへ

f:id:bibbidi-bobbidi-do:20210605150412j:plain

いのちを呼びさますもの いのちはのちのいのちへ /稲葉俊郎 アノニマ・スタジオ 

 

1週間ほど入院していた時、この本を傍らに置いていた。しばらく前に手にした装丁の美しい本を、いままさに読むべきだと感じたからだ。

 

大けがをしたとき。体調を崩して入院したとき。そういう不調の時でないと自分の身体を顧みないというのも恥ずかしいけれど、満たされているとき人は、自身を労うことを忘れる。多少のストレスを感じていても、とりあえず五体満足で動けていれば、きっと明日も同じように、明後日も、1年後も、10年後も、健康でいられるはずだと思い込む。そういうときには、自分の身体をもっといたわらなければダメですよ、もっと身体に敬意を払って、たくましくいられることに自信と感謝の気持ちをもって過ごしなさいよ、と語りかけてくれる本が必要だと思う。そしてこの2冊の本が、それだ。

 

人間の体は、調和と不調和の間を行ったり来たりしながら、常に変化する場なのだ。全体のバランスを取りながら、その根底に働く「調和の力」を信じ、体の中の未知なる深い泉から「いのちの力」を引き出す必要がある。それが、人の「全体性を取り戻す」ことにほかならない。

 

調和だけでは生きられない。当然不調の時もある。その繰り返す波に、バランスを取りながら乗る。一時の不調に落ち込んだり、健康な時に驕ったりしないで、長い目で、身体全体を見る。だから、病室で安静にしなければならなかったその期間を、人生のウィークポイントととらえるのではなくて、またこれまでの自分の不摂生を不必要に呪ったりするのではなくて、身体に敬意を示すための時間にしなければならない、そう気づくことができた。