百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

MENU

DOUBLE LOCAL

f:id:bibbidi-bobbidi-do:20210509151120j:plain

ダブルローカル 複数の視点・なりわい・場をもつこと

/gift_後藤寿和/池田史子 木楽舎 

 

自由が丘に住んでいる。ただ「なんとしてもこの街に住みたい」という、街に対する積極的な好意があったわけではない。クライアントからの依頼で企画・設計した賃貸集合住宅が自由が丘で、その企画が面白くて自身も住みたいと思ったからだ。楽しい街だし、決して嫌いではない。事務所が自由が丘だから通勤も劇的に楽になる、という理由もある。でもそれはあくまでもおまけ。住みたいと思える住宅に住むチャンスが来た。それがたまたま自由が丘だった。それだけ。

 

ローンがあるわけではないし、住み替えたいと思ったらいつでもできる。その点では住宅を取得するのに比べて身軽だ。けれど、いまのところ離れる予定はないし、そうしたくない理由もある。ここでの暮らしから得られるものをアウトプットして、他人と共有したい。「こういう暮らし、いいですよね。楽しいですよね」という想いを発信して、一人でも多くの人に共感してほしい。

 

いまの場所に留まる積極的な理由があるのなら、良い。もし「引っ越すのが億劫だから」「身のまわりのものを手放せないから」といった、何らかの足かせがあることが理由なのだとしたら、その足かせを外して、自由な発想で行動できるように考え方を改めた方が良い。その足かせの存在に気づかせてくれて、そこから自由になる一つの選択肢として、「ダブルローカル」という考え方は有効だと思う。

 

ダブルローカル。二つの拠点を持つという考え方。以前から「二拠点居住」という言葉はあったし、一つの居場所にこだわらないライフスタイルは特別なものではなかった。では、「二拠点居住」と「ダブルローカル」の違いは何か。

 

明確に定義づけているのではないのだろうけれど、これまでの「二拠点居住」にはどちらかがメインでどちらかがサブ、といった主従関係があった。平日は都内で仕事をして、それが自身の収入の大半を占めていて、週末は自然と接するために地方へ行く、というように。「セカンドハウス」という言葉のとおり、「ファースト」である主な拠点があって、その他にも住まいがあるから「セカンド」というように。

 

それに対して「ダブルローカル」が叶えようとしているのは、そこに主従関係はなくどちらも並列の関係で、どちらも同じくらい重きを置いて生活するということだと思う。どちらも自分にとって捨てがたい二つの「地元」があって、その間を行き来しながら自分がやりたいように過ごす。そして、その二つのローカルを行き来することで視野を広げ、自分の仕事や暮らしの選択肢を増やす。その多様性にこそ「ダブルローカル」の楽しさがあるのだと思う。

 

本書では、「ダブルローカル」でより自由な暮らしを実践している取り組み事例と、そこで得られることを知ることができる。