暗闇の効用/ヨハン・エクレフ 永盛鷹司 訳 太田出版
タイトルに惹かれ、購入。ジャケット買いならぬ、タイトル買いは、久しぶりのこと。
「静寂」と並んで、今の社会を穏やかに、かつ強かに生きるために必要なことを示唆する言葉が「暗闇」だと思っている。見渡すと社会は光に満ちている。寝る間を惜しんで仕事をし、いかに昼間を長くするかが課題になっているように感じられる。
過剰な光がもたらす「光害(ひかりがい)」という影響を過小評価せず、暗闇の価値を考え直す。「暗闇とは、光がないことではない。光のほうが、薄められた闇なのだ」という引用された言葉が示すように、暗闇の方こそもともと空間に満ち溢れていた世界であり、光はそれを覆い隠す存在であるということに気づかされる。
人は暗闇に恐怖する。それは危険から身体を守るためのシステムであって、当然のこと。しかし、その暗闇を当然のもの、むしろ価値のあるものとして受け入れることを覚えれば、恐怖を超えて、全身の感覚が研ぎ澄まされるのではないか。そう思えてならない。