百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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自分の身体を大切に

完璧になれない。だからいい 心が軽くなるヘミン和尚のことば/ヘミン・スニム著 おおせこのりこ訳 アノニマ・スタジオ

 

ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方/マイク・ヴァイキング ニコライ バーグマン解説 アーヴィン香苗訳

 

親を亡くして初めて親の大切さに気付く、という言葉がある。私がそれに近い気づきを得たのは、3年前に脳の病を患ったときだった。入院生活の中で、自分の身体が強く、しなやかであることを知った。健康でない時に人は、健康な体のありがたさを思い知る。それは文字通り「有難い」、つまりそうであることが当たり前でないということを表している。入院生活は私にとって、いままでずっと一緒に過ごしてきた身体を尊敬し、見直し、いたわる時間だった。

 

特に仕事をしていると、完璧でなければならない、クライアントに完璧な姿を見せないと見損なわれてしまう、という不安に押しつぶされるときがある。常に誰かにとっての理想のパートナーでありたいと焦れば焦るほど、仕事に割く時間が長くなり、想定外の雑務が飛び込んでくることにイライラする。結果、体調を崩す。

 

仮に体調を崩したとして、例えばクライアントや仕事仲間が「重荷を背負わせて悪かったね」と言ってその体を癒してくれるだろうか、と考える。もしくは、身体の不調が大きくなって入院したとして、その治療費を負担してくれるだろうか。たいていの答えは「No」だ。だとしたら、体調を崩さないように身体をいたわることは、自分自身が率先してやらなければならないことだ。

 

「完璧になれない。だからいい」を読むと、他人本位も大事だけれど、それ以上に自分本位にふるまうことの大切さに気付く。「まずは自分に対していい人になるんだ。そのつぎに、まわりの人なんだよ」他人にやさしく接するのと同じように、もしくはそれ以上に、自分にやさしく接するという態度を、常に忘れないようでいたい。

 

自分の身体を大切にするうえで忘れてはならないのは、より長い時間を過ごす場所を快適にするということ。そのことを実践しているのが「HYGGE」という言葉なのだろうと思った。北欧の穏やかな暮らしを表す、ぴったりとした訳が見当たらない言葉。その快適さを生み出す条件は、コーヒーなどのあたたかい飲み物であったり、キャンドルの炎だったり、ブランケットだったり、スイーツだったりと様々だ。

 

ヒュッゲという暮らしを彩るキーワードの中には、自分の身体が悲鳴をあげないようにやさしく包んであげるような、そんな自分想いの知恵が詰まっている。