百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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ガウディの独り言

ガウディの独り言/写真:藤井友樹 解説:田中裕也 絵:谷口登茂子 アートダイジェスト

 

「ガウディ展」を観に東京国立近代美術館に行ったのは真夏の、ものすごく暑い日だった。お茶の水から神保町、そして竹橋へと歩いたのを思い出す。あまりの大人気で、並ぶ人が熱中症にならないようにと時間予約制になった。予約していた入場時間まで余裕があったので、ゆっくりと歩いて向かった。

 

サグラダ・ファミリアの模型や映像、そしてガウディの他の作品の紹介等を鑑賞しながら、そのスケールの大きさにおののいた。翻って自分には、仕事に対する情熱がなさすぎやしないか、と急に恥ずかしくなった。仕事には予算、時間、クライアントの要望、その他いろいろな制約があって当たり前であり、すべてがすべて、ガウディの仕事のような価値観で取り組めるとは言えない。しかしそれでも、大いなるものをつくってやろう。急がず(神はお急ぎになりません)、ゆっくり、丁寧につくろう。そして何より、「明日はもっといいものをつくろう」という態度で取り組もう。そうやって自分の仕事と向き合ったらどうか。そう神に説教されたような気分になった。

 

「ガウディの独り言」はサグラダ・ファミリアの他、彼の独創的な作品の写真が多数掲載されている写真辞典だ。誰もが知っているサグラダ・ファミリアを抜きにしても、カサ・ミラカサ・バトリョ、カサ・カルベといったバロック風のその外観を眺めていると、どうしても私は、相対的にいまの自分の仕事が小さくだらしないもののように見えてしまう。それは役に立たない仕事とかそういう意味では決してなく、当然やりがいを持って取り組んでいるし、人の役に立つ重要な仕事だと思って取り組んでいる。けれど、もっと熱意をもって、クライアントの暮らしの充実に寄与することができるはずなのに、全然できていない自分が情けなく感じる。そう思わせてくれるのが、こうした大きな建築の一つの役割かもしれない。