百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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メメンとモリ

メメンとモリ/ヨシタケシンスケ KADOKAWA

 

モノに対する執着が少なくなった。完全になくなった、とまでは言えないけれど、昔ほど「なんとしても●●を手に入れたい」と思わなくなった。それが心の成長なのか、逆に購買意欲の鈍化なのかは分からないけれど、少なくとも自分は「物欲を制御できるようになった」と前向きにとらえている。

 

「メメンとモリ」は3つの物語。姉のメメンと弟のモリ。二人のやりとりが可愛らしくて、しかし大人であっても「そうだよなー」と考えさせられる。姉がつくった大事な皿を割ってしまい、謝る弟に姉は、大丈夫だよ、またつくればいいんだから、と説く。ずっときれいな状態であり続けるモノなんてないんだから。どんなに大切なものだっていつかは必ず手から離れるんだから。執着するのも良し、突き放すのも良し。その言葉は、「いま手にしているものが10年後20年後もあり続けるかどうか、という広い視点をもたなきゃね」という言葉のようにも聞こえる。

 

メメント・モリ」という言葉はラテン語で、人は必ず死ぬという警句を指すのだという。その警句が「メメンとモリ」というきょうだいのやりとりと重なり、人は必ず死ぬ=「だからいまを大切に」「目の前の短期的な出来事に振り回されるな」というメッセージを受け取った。