百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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よるにおばけと

よるにおばけと/みなはむ ミシマ社

 

大学時代。一緒に講義を受けるような友達がいなくて、ひとりでポツンと聴いているとなんだか「あいつ友達いないんじゃないか」と思われるのが嫌で、講義自体には興味があるのに、家を出るのが苦痛で仕方ないことがあった。いまならきっと堂々と「一緒に聴く友達がいないと学べないなんておかしいでしょ」と言って、最前列の席に座り、淡々と講義を聴くことができる。でも周囲が気になってどうしてもそれができない時期が、確かにあった。

 

外へ出るのが怖いことは誰にもきっとある。不安を抱えて「この不安がなくなればいいのに」と思うことも同様に。そんなとき、おばけがそばにいて「だいじょうぶ ここにいるよ」と言って寄り添ってくれたら、どれだけ安心できるだろう。不安は消えないかもしれないけれど、「抱えたまま」前へ進もう、という覚悟ができる。この絵本が、寄り添ってくれるおばけそのもののようだ。