百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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地球に靴で乗る

地球に靴で乗る/小檜山貴裕他 ループ舎

 

靴を履いて外を歩くということは、靴を介して地球の上に乗ることだ。足を危険な物から保護しながら、地球を踏みしめさせてくれる。そう捉える視点を得てから、靴に対する見方も変わった。小学生の時、かかとをつぶし、靴底をすり減らし、穴をあけた。その頃を反省して、もっと労わろうと思うようになった。反対に、靴底が減り、穴が開いたということは、自分の足の裏がすり減り、穴が開くような非常事態から、靴が守ってくれたのだとも言える。守り神でもあるのだ。

 

「地球に靴で乗る」は、奈良県靴屋「NAOT」が靴にまつわるエッセイを編集したもの。能町みね子の「境目を見つけて越える」を読むと、子供のころを思い出しノスタルジーな気持ちになる。登場する初詣に行く神社は、私にとっては実家のすぐ近くの神社か、母方の実家の近くにあった神社か。外出自体に後ろめたさを感じることもあるいま、一念発起して長めの散歩に出たくなるのは、きっと皆一緒なんだな。自分だけでなくて良かった、とこういうときなぜだか安心する。