百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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アースダイバー

アースダイバー 増補改訂/中沢新一 講談社

 

あまり読める気がしないけれど、読める人だと思われたい。これを読んで知恵をつけている人だと思われたい。そんな気持ちで背伸びして手にした本はたいてい、読むのに時間がかかる。もっと正確に言うと、読み始めるのに時間がかかる。だけど、読み始めると、その奥深さにじんわりと心の奥底の知的好奇心が刺激され、さらに読まなければ、と気が急いてくる。

 

そんな体験、きっと誰にでもあるだろう。私にその体験をもたらしたのが、本書だ。建築家の伊藤豊雄と対談しているちくま文庫「建築の大転換」で著者の中沢新一を知った。東京各地の太古からの成り立ち、地名の変遷が、普段気に留めることのないくらい、とてつもなく大きなスケールで語られている。

 

例えば、今は都心である新宿が昔、原野であったころの伝説。室町時代に今の新宿にたどり着いた鈴木九郎が、大富豪になったという話。こうした伝説から東京の歴史を学ぶのも面白い。ただ記憶していくのではなく、「なぜ」「どのように」と疑問がどんどん枝分かれして、その疑問を一つづつ解明していくプロセスこそが、大人の学びなのだろう。