百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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14歳の教室

14歳の教室 どう読みどう生きるか/若松英輔 NHK出版

 

自分が14歳の時のことを思い出す。中学2~3年生か。いまでさえ大人になり切れていないと感じることが多いから、ものすごい未熟な子供だったのだろう。どう本を読み、どうやって生きるかなんて、全然考えられなかった。そもそも全く本を読まない、本嫌いな子供だった。図書室で本を借りた記憶がほとんどない。

 

1冊の本を深く読むことの大事さを教えてくれたのは、本書と、「本を読めなくなった人のための読書論」(亜紀書房)だ。本書は特に、中学三年生に向けて行った授業の内容をまとめたもの。中学生にやさしく語り掛けている。

 

「深く」読める本に出会わないと「深く」読むことは始まりません。ここでいう「深く」読むとは一年程度では読み終えることができない本のことです。読めば読むほど謎が深まるような、読めば読むほど意味が深まっていくような本のことです。

 

今の私には歯がたたない、まったく太刀打ちできない、そんな本にも出会ってほしい。そうしたことが起こるのは、内容が難解だという理由だけではありません。知識だけでなく、人生の経験も十分でなく、読み終えることができないからです。難しいからではなく、自分のなかにその言葉と向き合う準備がまだできていないからです。そういう言葉に出会ってほしいのです。

 

いままでは、たくさん読むこと、その表面的なことを追っていた気がする。たくさん読めば当然その分の知識が増えるだろうと思っていた。けれど、(それも大事だけれど)、深く読む本に出会って、触れようとする姿勢をもっと持つべきだと感じた。そのことに14歳の時に気づいていたら、もっと違った、豊潤で滋味深い社会人になっていたかもしれないなんて思っている。