百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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あさ

 

小学校の5~6年生の時の担任の先生のことを、よく覚えている。とりあえず一言で言うと「怖かった」。若い男の先生で、「着任早々面白いことを言う頼りがいのある先生」からすぐに、「怒鳴ると怖い、怒らせたくない先生」になった。いまの自分よりはるかに若いその先生に、時に笑わされ、時に委縮しながら、高学年を過ごした。時を越え、社会人になってから一度小学校の同窓会が開かれ、参加したらその担任の先生が来てくれた。17年くらいぶりの再会だった。ルックスこそ多少老けていたものの、当時の威厳は変わらなかった。「あの頃は右も左も分からず、とんがっていました」児童に恐れられていたことを自覚していたのか、先生はスピーチでそう話した。

 

教える立場である以上に、自身が学び育っていく一人の人間である。たくさんいる児童をひとりひとり見つめながら、どうやって教育していこうかと日々考える。大人になれば、その立場の難しさ、うまくいかないもどかしさも理解できるようになる。「あさ」に登場する様々な子供たちと、彼らを見つめる先生に触れると、小学生の私は目の前の先生に対してまったく敬意を持っていなかったんじゃないかと気づき、泣けてくる。