「美しさ」を求めるようになったのは、いつからだろう。美しい絵画。美しいデザイン。美しい所作。美しい仕事。何をもって美しいというのか、その境界線は人それぞれで、かなり主観的な表現のように思えるこの言葉。それを欲しがるようになったということは、自分がより高い場所へ行こうと考えた時に必要なものが、こうした曖昧なものなのかもしれない。もうすぐ手が届きそうでなかなか届かない、歯がゆさを秘めているもの。それをなんとかして追いかける過程を人は「成長」と呼ぶのではないだろうか。
若松英輔の新刊詩集。ひとつひとつ丁寧に語られている詩を少しづつ読む。読んでいると、言葉を通して、自分の身体の中に他人を愛するもう一人の自分を探しているかのようだ。
美しいものに
ふれるたび
いつも
君にも見せたい
そう
思ってきた
でも きっと今も
ここにいない君と
いっしょだから
見るものが
美しいのだと
思い直している
(美の秘密)