レタープレス・活版印刷のデザイン、新しい流れ/碓井美樹 編著 パイ インターナショナル
活版印刷コレクション ビー・エヌ・エヌ新社
家づくりのつぼノート/ 西久保毅人/ニコ設計室 エクスナレッジ
「ツルツルよりザラザラ」。光沢のあるつるつるの素材より、でこぼこした、ごつごつした自然な素材感に惹かれるようになったのは、別に建築設計の仕事をしていたからというわけではないだろう。なんでと聞かれてその理由を説明するのも難しい。均一でない、ムラのあるのが本来のモノであり、光り輝いているのは不自然である。どこかでそうイメージしているのかもしれない。
文字を転写する方法は大昔から、活字と呼ばれる金属製の型を紙に押すというものだった。文字の部分が紙に対して凹むことで立体感と独特の心地よい手触りが生まれる、その活版印刷の文字が好きになった。何冊か持っている活版印刷の本では、写真を眺めるだけで手触りを空想できて面白い。そういえば、いつか自分のこだわりの名刺は活版印刷で、なんて夢を見ていた時もあったっけ。
建築家の西久保毅人さんの住宅を見て感じる心地よさは、活版印刷のデザインに触れているときに感じるそれと一緒なのではないかと最近気づいた。「ツルツルよりザラザラ」。左官や和紙、大谷石、ナグリ加工(工具で木の表面を削って跡を残す仕上げ)の床など、素材感にこだわった仕上げ材が多く、住まいづくりの参考にもなる。建築と印刷。扱うスケールは違うけれど、そこから肌を通して感じる快感のドーパミンは、一緒のものなのかもしれない。