誰もが経験したことのない危機の中を生きている今、気に留めなければならないのは「いかに災厄に負けずに強く生きるか」ではない。「自分は弱い存在である」ことをまず認めること。外からの力に簡単に負けてしまう存在だということから目を背けないこと。それがスタート地点に立つことであり、そこから解決策を導こう。そのような新しい視点に気づけた。新しい視点、といっても、特別なことではない。自分も含めきっと皆心に感じていたことなのだと思う。
「頑張れ」とむやみに励ますのではなく、「疑問や不安で頭がいっぱいだ」と弱さをさらけだして共有したドイツのメルケル首相の言葉を本書では引用している。「気を強くもって」という励ましはときに人を急かし、萎えさせる。そうではなく、苦痛を共有したうえで、それでも一緒に進んでいきましょう、という寄り添う姿勢が、ドイツに限らずいまの日本にも、必要だと思う。