百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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AX アックス

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AX アックス/伊坂幸太郎 角川文庫

 

グラスホッパー」「マリアビートル」から続く伊坂幸太郎の「殺し屋小説」三部作の三作目。主人公は恐妻家の「兜」。仕事は的確で業界では恐れられる存在なのに、家では妻の機嫌を損ねないようにふるまう気弱な夫だ。対象を殺すときは緊張せず躊躇ないのに、普段の家では緊張するという一風変わった男が繰り出すアウトローな物語。

 

だから、手に汗握る格闘シーンで発揮する強さ、頼もしさと、妻を前にしたときの繊細さとのギャップに、前二作にない面白さを感じる。ひょっとして著者も恐妻家?と勘繰ってしまうくらい、妻の顔色をうかがう兜の描写が生々しい。檸檬や蜜柑、岩西といったキャラクターも登場するから、前作を読んでいる人は楽しさが2倍にも3倍にもなる。