百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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読むことの風

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随筆集 読むことの風/アサノタカオ サウダージ・ブックス

店主所有古本につき表紙に若干の汚れあり。気に入ってくださった方には、1,600円(税込み)でお譲りします。

 

神奈川県の三浦半島で「サウダージ・ブックス」という活動を行っている著者による随筆集。ところどころにちりばめられた詩も、アクセントになっている。

 

本の言葉に囲まれて過ごすことを一つの理想としていたけれど、本のない、文字情報に触れないところで過ごしたいという著者の言葉に、はっとした。本を読むことを習慣としていない人を、いつの間にか「書物を読んで知識を蓄えることを怠っている人」というようにみなしている自分に気づく。しかし著者の言葉を借りると、「ぶあつい手のひらと節くれだった指で、書物ではなく土を読み、火を読み、風を読み、水を読み、大地の薬草や牛の群れ、織物の文様や霧の流れを読んできた人びと。好奇心が旺盛で、野の知恵をもつ古老たち」は、決して「怠っている人」ではない。わたしたちがどうやっても読み取れないことを、積極的に読み取る知恵をもっている。本を読むこと自体に、万能さを求めてはいけない。本以外に読むべきものはたくさんある。そう気づかせてくれる本だ。