百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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本の読める場所を求めて

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本の読める場所を求めて/阿久津隆 朝日出版社

 

初台の「fuzkue」に行った。満席だったので数十分後の時間を案内してもらい、ようやく座れた。フカフカのソファに腰をおろす。全員が本を読むことに集中していた。自宅では気が散ることもある読書を、思う存分楽しめる。他のどの店でも味わえない、贅沢な時間だと思った。

 

本屋でもなく、喫茶店でもない。ブックカフェでもない。長時間居ても罪悪感を感じることがなく、本を読むことに集中できる。気が向いたらコーヒーを飲んだり軽食を食べたりもできるけれど、すべては本を読む時間を快適にするため。そんな場所があったらいいなぁといまなら思うけれど、いままではないことが当たり前だったので、そんな場所を求めてすらいなかった。きっと、人の心をくすぐる「ほしいもの」は、「ないのが当たり前だから求めてすらいないこと」のなかにあるのかもしれない。

 

そのfuzkue店主によるエッセイは、カフェも、バーも、図書館も、本を読むことに集中できる場所では決してないと指摘する。ただ楽しく本を読みたいだけ。そのための場所がほしいだけ。その純粋な想いに、「そうだよね」と共感を強くした。