百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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ことばのくすり

ことばのくすり 感性を磨き、不安を和らげる33篇/稲葉俊郎 大和書房

 

「ことば」には2種類の性格のものがあると思っている。薬になることばと、毒になる言葉だ。

 

今、主にSNSを通じてあふれ出る情報を好きなだけ受け取ることができる。ほんの20年前には想像もできなかった、便利な時代だ。便利で、豊かである一方で、その中には少なからず自分の身体を損傷させることばもある。これについて、ずっと心に残っている表現がある。「まとまらない言葉を生きる」(荒井裕樹著・柏書房)のなかで、「生きる気力を削ぐ言葉」という表現が登場する。前を向いて歩こうとする気力を萎えさせる言葉とも言えるだろうか。そうした鋭利で恐ろしい言葉が、溢れている(もしかしたら、自分も無意識のうちに他人にそのような言葉を向けてしまっているのかもしれない)。

 

気づかないうちに毒性の強いことばに蝕まれる前に、くすりとなることばに意識的に触れるのが望ましい。そのためには、朝起きてから夜眠るまでの間に、自分の「からだ」や「いのち」全体に感謝し、敬意を持ち、薬を飲んで休むときのように自らを労わる姿勢が、大事であろうと思う。そのことを、からだを「部分の集まり」ではなく「全体性をもったもの」として捉えることを強調する著者の、一日の朝から晩までの何気ない気づきを綴ったエッセイを読み、学んだ。