百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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くちぶえサンドイッチ

くちぶえサンドイッチ/松浦弥太郎 DAI-X出版


数ある松浦弥太郎さんのエッセイの中でも、最も好きで、宝物のように大切にしているのが本書である。よく行くレストランの店員さんに「いつもありがとうございます」と言われて飛び跳ねるくらい嬉しい気持ちになることに共感してくれる方がいると知ったのも、自分が元気でいることが家族や周りの人への一番の恩返しであると学べたのも、カフェでアイスコーヒーを飲むときにストローを使わなくなったのも、この本のおかげだ。詳しくは第5章「くつぶえサンドイッチ」を読んでほしい。

 

最初は文庫版で出会って虜になった。サンドイッチが載ったプレートが目で、ストローが鼻。タイトルの「くちぶえサンドイッチ」の文字が口。笑った顔を模した表紙のデザインが可愛らしい。その後、BOOKSHOP TRAVELLERで、古本ではあるが単行本に出会い、素敵な縁だと思い、買った。箱型の装幀で、多少かさばりはするものの、特別感があって良い。

 

第5章に掲載している「くちぶえサンドイッチ」と題した52篇のミニエッセイは、アフタヌーンティー・リビング千駄ヶ谷で2002年1月~12月にフリーペーパーとして配布されたもの。毎週必ずエッセイを書いて、特定の場所で「ことば」を手渡す。それを1年続けた時に、集まった「ことば」はどんな力を発揮し、読んだ人にどんな影響を与えるだろう。考えるだけでワクワクドキドキする。そして僭越だけれど、自分も同じように、「ことば」を、できれば実体験に基づく「こんないいことがあったよ」というものを発信して、伝播させるということを、試してみたいと思った。

 

毎月第四日曜日、カフェのテラス席に本を並べて売っている。月に一度の出張本屋というタイミングで、この「ことばを手渡す」ということをやってみようといま、画策している。松浦弥太郎さんの真似であり、二番煎じじゃないか、と言われても構わない。私の「こんないいことがあったよ」を共有してもらえるきっかけになるのであれば。