百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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小さな家を建てる。

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小さな家を建てる。豊かな住まいをつくる60のヒント/若原一貴 エクスナレッジ

 

建設会社で営業の仕事をしているときも、設計事務所で住宅の企画をしているときも、住む家(建物)の居心地よさが幸福度の向上に大きく寄与すると思っていた。しかし、あまり大きな声では言えないのだけれど、それは徐々に、「家にそれほどの力があるだろうか?」という疑いへと変わっていった。オーダーメイドで自分のライフスタイルに合わせた住宅ではなくても、例えば質素で古い、単純な箱のような住まいであっても、それなりに快適に暮らすことは充分にできるだろう、と。むしろどんな環境でも幸せを感じられる余裕をもった方が楽しいだろう、と。

 

建築家が快適な暮らしについて熟考し、設計した住宅を見ると、今度はそんな考えもまたどこかへ吹っ飛ぶ。そうやって工夫された家に住むことで、いらぬストレスから解放され、明日への活力になる。それが自分の幸せの実感へとつながり、仕事のパフォーマンスが向上して、自分だけでなく社会全体が成熟する。その力を、もう一度信じてもいいんじゃないか。

 

本書には、「定位置からの視線の抜けを2か所以上つくる」「ほどよく籠れる場所をつくる」「部屋全体を明るくしすぎない」「(車やテレビが本当に必要か?など)当たり前を見直すことで新たに手に入れられる時間や価値観があると知る」など、快適な暮らしを考える上で重要なことがたくさん書かれている。心地よく、落ち着いて過ごせる住宅で暮らすことは、想像以上に大事なことで、いまの自分の幸福度に大きく貢献しているのかもしれない。そんな気がしてくる。