百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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草木鳥鳥文様

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草木鳥鳥文様/梨木香歩 文 ユカワアツコ 絵 長島有里枝 写真 福音館書店

 

さいころ、実家に小さな鳥の図鑑があった。父が好きでよく読んでいたようだ。だからわたしも自然と手に取って見ては、鳥の姿を眺めていた。けれど鳥のルックスと名前の記憶は、ほとんどない。そういう意味では、図鑑を見る意味がまるでない子供だった。

 

数少ない、記憶にある美しい鳥が、アカショウビン。あとはコノハズクくらいか。アカショウビンはその橙色の体と大きな嘴がカッコよくて、よく写真を眺めていたっけ。

 

「草木鳥鳥文様」は、作家のユカワアツコさんが抽斗の底に描いた鳥の絵を集めたもの。その鳥にまつわる梨木香歩さんのエッセイも淡々としていて、読んでいてい心地よい。抽斗の木の表情が、無地のキャンパスに描かれたそれとはまったく違ったあたたかさを出している。どれもがうっとりするような美しさだ。表紙にもなっているアカショウビンが凛々しくて、図鑑をぼんやり眺めていた実家での頃を思い出しながら、時間の経過を味わう。父の日に贈ったら、喜んでくれた。