声に出して読みづらいロシア人/松樟太郎 ミシマ社
『罪と罰』で有名なロシアの作家・ドストエフスキーを、割と最近まで「ドフトエフスキー」と思っていた。ロシア人の名前はどうも発音しづらく、また書き間違えやすい。ただそれは自分だけがぼんやり思っていたことではなかった。こうして本になって、「言い間違えられてこそ、書き間違えられてこそ、ロシア人の名前ではないか」と言われるくらい、誰にとってもややこしいものなのだろう。
「ポチョムキン」「ショスタコーヴィチ」「ホドルコフスキー」・・・。読みづらさ、素っ頓狂さ、間抜けさ、がなんとも面白く、逆に親近感がわくのかもしれない。
そういえば、『展覧会の絵』のムソルグスキーも、最初「ムソグルスキー」と勘違いしていたんだった。アル中になって精神を病み、40そこそこで帰らぬ人となったという破天荒な人生を、知らないまま彼の名曲を聴いていたのかもしれない。とすると本書は、人となりを知ることができる解説書のようでもある。