百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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本を贈る

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本を贈る 三輪舎

 

モノとしての本の美しさを、それを目の前にして改めて実感したのが、この本であったと思う。クロス張りの表紙。タイトルの「贈」の文字は金文字で切り抜きになっている。各ページの紙も光沢がなく凹凸のある表情豊かな紙で、触り心地が良い。文字の余白も絶妙で、こういう本が、いわゆる書物と呼ぶのにふさわしいのだなと思った。

 

「本を贈る」この言葉に、私がこれから人生の時間をかけて社会に提示したいことが凝縮されている。何をしたいかと聞かれたら、端的に言うと、本を贈りたい。いまの自分の気持ちを的確に表しているのがこの本であり、きっとこれからずっと自分の本棚に配架され続ける。

 

書店員、編集者、装丁家、校正者、製本、取次・・・。1冊の本が読者に届くまでに、さまざまな役割の手が加わっている。1冊数百円~数千円の本ができるまでに、たくさんの人が関わっているのだ。前職で建築業界にいたので、建物ができるまでにそれこそ多くの職人が関わっていることを肌で感じていた。スケールは違うけれど、本だって同じだ。そして本の売り手である書店員には書店員なりの、読者に本が届いた時の嬉しさ、達成感がある。お客さんに手に取ってもらったときの、「小躍りするほどうれしいのだ」という瞬間がたぶん待ち遠しいから、私は本を贈りたいのだと思う。