
肯定からあなたの物語は始まる 視点が変わるヒント/稲葉俊郎 講談社
明日はもう大晦日。そんな年の瀬ギリギリに、「今年はこの本に出会うために読書をしてきたのかもしれない」と思わされるような本を手に取った。大好きな稲葉俊郎さんの最新刊だ。
いまの自分は、過去の出来事の積み重ねによってできている。あの時にあの経験をしたから、いまの自分がある。見て、聞いて、食べて、話をして、学んだことが、いまの自分を細胞レベルで形づくっている。とするならば、過去の自分を否定するのではなく(「後悔」や「反省」とは違う)、自然のものとして受け入れなければ、その先の未来の自分に目を向けることができない。「この先どうやって生きていくべきか」をきちんと考えるためには、これまでの自分を肯定することが土台になければならない。自己否定の強迫観念をふりほどいて、自分を肯定して初めて、未来に向かった自分の物語が始まるのだということを再確認した。
出会うべき言葉と出会うために旅をしているのだと思った。自分の中にありながら奥にしまい込まれて引き出すことができなくなった言葉が、土地と人の力によって輪郭を与えられた気がした。出会うべき言葉は外側からやってきたように見えるが、それは内側からも浮かび上がってきている。人と人が出会うように、言葉も外側と内側でおたがいに引きあうことで出会うのだ。
これまでのすべての時間が自分をつくり、体と心の歴史となる。過去の地層の上に自分が立っている。過去のことをいろいろと思い悩むのではなく、次に進むためには未来を見る必要がある。
過去を振り返って自己嫌悪にさいなまれる年末ではなく、未来を見据える年末にするために、ぜひ手に取ってほしい本だ。