百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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2025年10月31日

 

特に気にせず朝家を出て、夕方職場を出たらけっこう雨が降っていた。自宅の最寄り駅に着いた時には雨がさらに強くなっていた。当然傘は持っていない。

 

目のまえで信号が赤になった大きな交差点で、青になるのをじっと待っていたところ、すぐ隣に人の気配を感じた。振りむいたら、男性が立っていて、傘を差し出してくれていた。本当に申し訳ないことに、親切だと気づくのに数秒を要した。「あ、ありがとうございます。すみません、傘忘れちゃって」なんて言うのが精いっぱい。信号が青になるまでの数十秒間、その方の傘に守られながら、それ以上の言葉を口にできなかった。じんわりと優しさがしみてきて、しびれた。