
大学で建築を学び、社会人になってから15年ほど、建築をつくる仕事をしていた。第一線で「設計をする」ことはかなわなかったけれど、別の立場で、住宅を中心に供給することに貢献できたと思っている。ただ建築家と呼ばれる人がどうやって建築に向き合って、何を想いながら設計しているのかは常に興味があって、何人かの建築家の本を読んだり、した。建築家の堀部安嗣の本もそのひとつ。そして今回ミシマ社から、「利他」というテーマと結び付けた対談集が出ると知り、これは読まなければ、と思って仕入れた。
「利他」について研究している中島岳志と堀部安嗣との対談集。住宅を設計する際に、「座りのよい」配置を熟考する。街並みのほか風や光、土といった環境をよく読み取り、それらに「沿った」建築を考える。そのためには、人間とはこうあるべきだ、という断定をしてはいけない。そこに住む人間だけでなく、周囲の環境全てが、そこに建つことを望むような建築はどういうものか、耳をすませて神経を集中させる。こうした姿勢をもつべきだと自分自身ずっと思っていたのだけれど、これこそまさに利他の姿勢なのだと気づいた。
利他の一番の敵というのは、何かをコントロールしようとすること、制御しようとする力、そういうものではないか。それよりもそこにいる人や、さまざまなものが持っている潜在的な力を、どう引き出すことができるか、そのためにどう「沿う」ことができるか、ということが、非常に重要な利他の姿勢なのだろうと思います。