はやくはやくっていわないで/作・益田ミリ 絵・平澤一平 ミシマ社
歩くはやさで/文・松本巌 絵・堺直子 小さい書房
このところ、「急がなくていいよ」「自分のペースで」というように、ゆっくりと前に進むことを優しく説く本が多い印象を受ける。それは今の社会の流れが、選書という形で現れているということなのかもしれない。
「はやくはやくっていわないで」が伝えるのは、そのままタイトルの通り。ひとりひとりが違う人間。よってペースもまちまち。できることとできないことがある。そう言えば当たり前なのに、なぜ皆は遠慮なく「どうしてできないの?」と聞くのか。できない理由を聞くのではなく、できるようになるのを待つ。遅いから早く!じゃなくて、待つ。
「歩くはやさで」が伝えるのは、先ほどとはまた少し違う。自分のペースで、と説くのではなく、急いでいると気づいたら、ちょっと立ち止まって冷静になってみよう、という感じ。スマホだけ見ていないで、たまには空を眺めてみたら?虹に見とれてバスに乗り損ねるかもしれないけれど、それだっていいんじゃない?なんて余裕をもてたら最高だ。便利なものは大事。忙しく仕事をすることに生きがいを感じるならそれも良い。ただ、「本当は奪われているのかもしれない」と自覚することの方がもっと大事。
どちらの絵本も、ハイよりロー、急がずゆっくり、という流れだけれど、似ているようで、ちょっと違う。ただ、お互いががっちりと結びついている。周囲が寛容になれば、堂々と自分のペースで行動できる。自分のペースで行動できれば、自ずと「奪われているかもしれない」状況から遠ざかることができる。