百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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自分で自分を運営するということ

もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら/手塚純子 木楽舎

 

松浦弥太郎の仕事術/松浦弥太郎 朝日新聞出版

 

昨年の夏、出版社の方に声をかけていただき、流鉄流山駅のすぐ隣で本を売る機会をいただいた。観光案内所兼コミュニティスペース「machimin」には、常連さん、近くの人、スタッフ友人、通りすがりの観光客など、たくさんの人が出入りする。その日によってその場所で行われていることが全く違う。そのような場所で、どうやって本を売ろう、何をしたら来る人を喜ばせることができるだろう、ということを考えた。自由が丘から流山までわざわざ通ってくれるなんて、と恐縮されもしたけれど、自分にとってはこの機会がひとつの挑戦だったから、通うことも苦ではなかった(本を入れたトランクを転がしての1時間超の電車移動は確かに大変だったが)。

 

「machimin」を動かす代表の手塚さんの著書は「もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら」。流山市を会社に、そこで活躍する人を社員と見立てると、どんな人がいたら会社が成長するか、ということを考えることは、まさに人事部長の仕事に当てはまる。かといって、「あなたは適。あなたは不適」と上から目線で采配を振るうのではなく、「こんなことができるんだったら、ここでこんなことをやってみてはどう?」とアイデアをぽんぽん出していくような、そんなイメージだ。本を売り、手塚さんと話をするなかで強く感じたのは、「場所を提供して個人の成長を支援する、指導する」といった「上から」な態度ではなく、「この場所を活用してくれてありがとう。面白いコトをやってくれてありがとう」という感謝の気持ちだった。人事部長という上司的な立ち位置から、一緒に考えながら行動するパートナー、伴走者のような立ち位置に、徐々に変わっていったのではないかと思った。

 

「大人とは、『株式会社自分』の経営者のようなものだ」これは、尊敬する松浦弥太郎さんの本をいろいろ読む中で得た、私にとっての一つの教訓だ。組織に属している人であっても、独立した一個人という意識を持つことが大事。自分が社長だったらこう判断する、という当事者意識が、仕事人としての自分を成長させてくれる。そうした考え方が、本屋という自営業に挑戦するための勇気をくれた。

 

自分は自分という会社を運営する社長である。そして、社長の視点で、どうしたら自分を社会に役立てることができるかを考える。「仕事とは『自分』を役立てること」これも松浦弥太郎さんから学んだ大きな教訓だ。自分を役立てるためには、自分と社会をちゃんと知らなければならない。知るために必要なのは「当事者意識」だろう。

 

「人事部長」と「社長」とでは多少目線は違うけれど、共通しているのは「自分だったらこうする」という姿勢。手塚さんのエネルギッシュなトークを目の前で聞き、松浦弥太郎さんの優しさあふれる言葉を淡々と読み、「自分だったらどうする?」といつも自分に問いかけている。