100日間おなじ商品を買い続けることでコンビニ店員からあだ名をつけられるか。ビスコをめぐるあたたかで小さな物語/与謝野 光文社
すさまじく長い題名の本。蔵の本屋で見つけてつい手に取った。単行本1冊のボリュームを半日で読み終えたのはずいぶん久しぶりな気がする。
題名の通り。コンビニで100日間毎日ビスコだけを買う、というルールを徹底することで、店員さんからどう認知されるか、検証を試みた会社員の話。noteでの投稿が話題になって書籍刺されたものだという。
同じ店員さんとのやり取りが数日にわたって淡々と進み、日記のように確実に記されているのを読むと本当に心地よい。徐々に人間と人間との自然なコミュニケーションが生まれ、店員さんの雰囲気までもが変わっていく。
コンビニで買い物をし終えた時に、ふと、ぞっとすることがよくある。いまレジで会計をした1分弱の間、私は店員さんと目を合わせただろうか、と。いや、合ってないな、と気づいた時、機械精算も多い中でそれは当たり前じゃないか、という声と、相手も人間なんだからそれじゃ味気ないだろう、という声の両方が聞こえる。検証を始めて数日で店員さんから声を掛けられたという一つの事実に、機械にはできない人間の力をまざまざと見せつけられた気がした。