百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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アルヴァ・アールトの建築

アルヴァ・アールトの建築 エレメント&ディテール/小泉隆 学芸出版社

 

ブログ、ジョギングと並んで、毎日必ずやることとして「勉強」を掲げたのは先月のこと。一日10分でもいい。少しの時間であっても、必ず知識を得て考える時間をつくることを意識している。これが無理なく続く毎日の習慣になったらいいなぁと思っている。

 

フィンランドの建築家、アルヴァ・アールトの建築を、そのディテールをつぶさに見つめ、その設計意図を想像する。そして、その建築の美しさを享受する側になった自分を想像する。そこから得られるイマジネーションは、きっと建築に限らず、本を紹介する自分が他者に提供するサービスの参考になると思っている。人はどんな空間を快適だと思うのか。人はどんな読書体験をしたいと思っているのか。

 

マイレア邸の、「林立する多様な柱」に包まれた階段の、段板の美しさに息をのむ。「自然素材を多用し、空間が有機的に構成されたこの住宅は、近代建築史において特異な位置を占める。」毎日足の裏で触れて歩く階段こそ、心地よい場所であるべき、という自分の考えとも一致する。角がとられ、丸みをおびた踏板と丸柱は見るからに優しく、あたたかそう。

 

アールトの作風は、初期の古典主義様式から機能主義様式を経て、独自のスタイルが確立された後も発展、変化していくが、「建築を人間的にする」「物質の世界を人間の生活と調和させる」という大きな目的は一貫して変わっていない。

 

この丸みをおびた階段の踏板はその一つの例に過ぎないが、こうしたディテールから私は、アールトの建築を「人間的」だと感じる。