百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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オールアラウンドユー

オールアラウンドユー/木下龍也 ナナロク社

 

最高に美しい本。布張りに箔押しの文字。裏表紙にバーコードや定価表示などはなし(帯に記載)。胸ポケットにしまって持ち歩きたい、心臓に近い場所に隠しておきたい、そんな本だ。

 

歌人・木下龍也の第三歌集。123の短歌が1ページに1首ずつ、ていねいに差し出されている。

 

私は詩や短歌を読むことに対してちょっとだけ抵抗感がある。なんだか美味しく味わえないんじゃないかという劣等感がどうしてもつきまとうからだ。特に最近、短歌と言いながら五七五七七になっていない、いわゆる自由律短歌を目にすることが多かったからかもしれない。制約にこだわらない自由な発想が生まれる点では良いのだろうけれど、なんだかリズムが自分には合わず、ぎくしゃくする感じがする。しかし本書は五七五七七に忠実で、ゆっくりと、優しく語りかけるように、自分に言葉が入ってくる。それがなんだか嬉しい。

 

ねぇ鯨、きみの尊い息継ぎにぼくは遠くで拍手をするよ

 

生きてみることが答えになるような問いを抱えて生きていこうね

 

1首ずつ、ページをぱらぱらめくって順番を行き来しながら、ゆっくり楽しんでいる。