百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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数学の贈り物

数学の贈り物/森田真生 ミシマ社

 

単に「独立研究者」や「数学者」などの肩書を見ただけでは、興味を持たなかったかもしれない。彼に関心をもったのは、彼が私とほぼ同年代(やや若いくらい)で、斬新な講演などライブ活動を行っていて、かつ本書が、私の好きな出版社であるミシマ社から出版された本であったから。数学なんて、中学高校と一生懸命勉強した難しい科目という印象で、解く過程は面白くはあったけれど、それ以上の感慨はなかった。その数学を仕事として扱う彼の、丁寧に吐き出された言葉によるエッセイは、何も予定のない休日、静寂の中で読むのに適していると思う。秩序立った美しい数の世界と、生々しくて正解のない人間の世界。相反する二つの世界をつなぐものの正体は何だろう、と考える。

 

目の前の赤ん坊という生命の神秘を見つめながら、物理世界との関連性を見出す。彼の目を借りて現実を見ると、世界が何か「数学で解明することができない」おおいなる力の影響を多分に受けて成り立っているのだということに気づく。