百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

MENU

「新しい郊外」の家

「新しい郊外」の家/馬場正尊 太田出版

 

都内に住んでいると、その便利さが当たり前になって、遠く離れたところで暮らすなんて無理、面倒臭いし不便だし、なんて気持ちになることがある。しかし昔はその「面倒くさい」「不便」が当たり前だった。そういう場所でのびのびと育った。暮らしが変わるとそれに応じて自分の能力も変わる。それは、今までできていたことができなくなることも意味する。だから都内で便利に住む、ということだけに縛られるのではなくて、もっと視野を広げると、それに応じて人生の可動域もどんどん広がっていく。

 

古本市で出会った本書は、建築家であり、東京R不動産の運営者である著者による郊外の家づくりの話。新日本橋から1時間20分で行き来できる房総の土地を買い、一軒家を建てる。それまでの波乱万丈な暮らしの教訓を踏まえながら、一つの価値観にとどまらない自由な暮らしを実践していく。仕事場としての都心居住もしながら。だから今で言うところの「二拠点居住」「ダブルローカル」だ。14年くらい前の本だけれど、当時から斬新なスタイルを実現している人がいたのだと知って驚いた。